JALグループの整備業務を担う整備士は、安全で快適な航空機をスムーズに飛ばすため、限られた時間の中で的確かつ迅速に整備を行わなくてはなりません。
運航整備では、整備士が航空機の到着に合わせてオフィスを離れ、飛行機の側(以下、機側)で必要な整備作業を行い、航空機を出発させた後にオフィスに戻る、という一連の流れで業務を行っています。
一旦機側に行くと主な連絡手段は無線のみであったことから、急にマニュアルなどの書類が必要になった場合は、オフィスに待機している整備士に無線で連絡、受電した整備士が書類を紙に印刷し、機側に届けています。
また、飛行機出発後オフィスに戻った整備士は、整備内容を記録した書類の整理や、複数システムへのデータ入力といった業務を行っており、飛行機を「整備する」業務以外にも多くの時間が必要です。
そこで「整備士が整備士にしかできない専門的な業務に従事する時間を増やし、その分飛行機の品質をより高めていく」ために、何とかしたいと立ち上がったのがSMARTプロジェクトです。現場の整備士、IT部門、さらには外部パートナーにも参画いただき、シンプル、スマート、スタンダードという3つをキーワードに活動を開始しました。
シンプル:誰でも使える、多重入力を無くす。
スマート:さまざまな情報を手元の端末で取得する。ミスを起こしにくくする。
スタンダード:業務プロセスを標準化する。業界標準アプリを目指す。
専用アプリを活用することにより、整備士はこれまでオフィスで行っていた事務作業の大部分を、モバイル端末を用いて場所を選ばず実施することができるようになりました。さらに画像や動画もアプリ上で手軽に取得でき、飛行機の状況を関係者間でタイムリーに共有することも可能となりました。またフライトスケジュール、駐機場所の最新情報も、モバイル端末のアラート機能を活用して把握しています。
これまで運航乗務員や客室乗務員、整備士が航空機の飛行情報や不具合の修復情報を記載する、搭載用航空日誌(フライトログ)、キャビンログは紙である必要がありました。これらを電子的に記録・保管するシステムを導入するために、整備士自らが運航/客室乗務員とシステム開発について検討、国土交通省と関連法制変更の調整を行い、日本で初めてフライトログおよびキャビンログ電子化の認可をいただきました。2019年8月よりエアバスA350型機において利用を開始し、さらに2020年6月からはボーイング737型機にも利用を拡大しております。
2017年4月アプリを用いた新しい働き方の運用が始まりました。実際にアプリを使用した整備士からは「出発前の航空機で整備作業が必要になった場合でも、サポート部門とアプリですぐに正確なコミュニケ―ションをとることができ、余裕をもって作業ができました。」、「どこにいても欲しい情報が手に入れられて迅速な判断ができました。」など早速、整備士をサポートするツールとして活用されているとの声があがっています。
しかし、忘れてはならないこともあります。整備士の責任に変わりはないということです。ITを使うことで容易に、有効かつ迅速に情報が得られますが、情報を理解し正しく判断していくことには変わりません。整備士の技術力とITが組み合わさることで、我々が目指す品質・定時性の向上につながると信じています。
本プロジェクトではJALグループだけではなく、世界の航空整備士が活用できるアプリとなることを目指した作り込みを行っています。JALはこのアプリを活用して整備士の業務を変革し、世界トップクラスの機材品質と定時性のさらなる向上を目指すとともに、整備士の新しい働き方を日本から発信します!